アハメドくんのいのちのリレー

鎌田　實（著）　安藤俊彦（画）　ピーター・バカラン（英訳）　集英社　1800円（税別）

　中東のイスラエルとパレスチナで続く争いに、心を痛める日々が続いています。たくさんの子どもたちも　この不幸な出来事の渦中で　日々を過ごしていると思うと、胸が締めつけられる思いです。

医師で作家の鎌田實先生は、2011年、イスラエルとパレスチナ平和を願い、事実をもとに　この本を書かれました。

　主人公のアハメドくんは、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区の難民キャンプに暮らす12歳。アハメド君は、ある日、自治区内で買い物に出かけ、イスラエル兵に銃で撃たれて亡くなりました。鎌田先生は、この出来事を新聞で読まれて、そこに書かれていた内容に驚かれたそうです。

　アハメド君のお父さんは、イスラエルの子どもたちを助けるために、アハメドくんの臓器を提供されたのでした。鎌田先生ご自身、このお父さんの行動について、直接会って　話を聴きたい　パレスチナを訪ねられました。

　お父さんは、「私はただ、人間として正しいことをしただけ」と話されたそうです。人を助けるのに、国籍も民族も宗教も関係ないという覚悟に、鎌田先生は感銘を受けらました。

更に、鎌田先生は　アハメド君の心臓を提供されたイスラエルの少女、サマㇵさんにも会いに行かれました。サマㇵさんは、アハメド君のお父さんを、『二人目のお父さん』と呼び、将来は、イスラエルとパレスチナの平和のために働きたいと、語られたとのことです。

　鎌田先生は、悲しみや憎しみを横に置いて、『こどもの命』を救ったアハメド君のお父さんの行動が平和の実現になるかもしれないと思い、この本を書かれました。本は、英語、アラビア語、ヘブライ語に翻訳され、パレスチナのヨルダン川西岸とガザ地域で、配布されたそうです。

今起こっているこの悲しい惨事から何を考え行動できるのか、大人が子どもの背丈でわかるように　伝えなければならないと思います。

この本を一緒に読むことから、考えるきっかけの扉が開きますように。