トップ > 正司昌子先生のメッセージ

正司先生の
メッセージ

プロフィールをみる

英語教育は焦らなくても

2022.01.19

「先生、急いで御相談したいことがあるのですが」、2歳半の裕多くんのお母さんから電話がかかってきました。

「裕多が三日前から突然わけのわからない言葉をしゃべりだしたんです。今朝も家族揃って朝食を食べている時、一言も日本語をしゃべらずわけのわからない言葉でしゃべり続けていたのでおじいちゃんがすごく心配しているんです。どうしたらいいでしょう」

 1ヶ月程前のレッスンの時には気になることはなかったので、高熱でも出した後遺症かな、などと思いながら「この間のレッスンの時には変わったことなかったのにどうしたんですか」と聞くと、お母さんはちょっと言いよどんでから、この間のレッスンの時に英語は急がなくていい、どうしてもしたかったらきれいな発音のテープを毎日十分聞かせるだけで充分ですよと言われたのですが、お友達のお母さんに誘われてインターナショナルの幼稚園を見学に行き、よかったので帰りにビデオ教材の説明会聞きに行ったら、英語教育のすばらしさに感激してしまってどうしても裕多に英語を勉強させたくなってしまったんです。英語のビデオとテープをいっぱい買ってきて裕多に見せたらとても気に入ってそれ以来朝から晩まで見続けているんです。そしたら3日前から日本語を全く話さなくなり英語のような言葉をしゃべり続けているんです。大丈夫でしょうか。どうしたらいいのかわからなくてお電話させて頂いているんです」と言われたのです。


 前回のレッスンの時、早く英語教育をしなければと焦っておられたので、焦らなくてもいいですよ、それより日本語をきちんとした方がいいですよと言っておいたのですが、周りのお友達がインターナショナルの幼稚園に行ったり英語教室に行きだしているのでお母さんの教育熱心と重なって、いてもたってもいられなくなってしまわれたようです。でも、このまま続けていれば、今まで使っていた日本語が危くなるかもしれないので、とにかく英語漬けの生活はすぐ止めるようにいうと、「でも裕多がすごく気に入ってるんです」と言われます。「じゃ英語ビデオは1日2時間にして下さい」と伝え電話を終わりました。

 1週間後のレッスン日、裕多くんは一言も日本語をしゃべらず、英語の抑揚に聞こえるけれど英語ともわからない言葉をしゃべり続けていました。「裕多は英語をしゃべっているんでしょうか」、 お母さんは心配されていましたが、裕多くんはあれからもずっと英語ビデオを見続け英語のテープを聞き続けていたそうです。

 お母さんには、とにかく英語ビデオを止めること、母国語である日本語が大切なことをお話ししておきましたが、この日以来教室へは来られなくなりました。

 一年後、裕多くん母子に会う機会がありました。英語教育はすっかり止めていました。家庭では英語を使うことがないので英語は殆ど覚えてないと言っておられました。それより勿体なかったのは、裕多くんは利発な子どもだった、他の能力も落ちてしまっていたことです。取り返しがつきません。とても残念です。