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お母さんの自立がぼくの自立

2022.03.28

「ぼく、お母さんがいないとできないよォ・オヵーサーン、オヵーサーン」お母さんの足にしがみついて必死で止めようとするのをふり切って出ていってしまったお母さんを追い求めて、4歳のIくんは泣き叫んでいます。

 「Iくん、お母さんがいなくても、一人で何でもできるよ。できたらお母さん直ぐ帰ってきてくれるからね」と宥めてうちに泣き止み、だんだんそのきになって、レッスンを始めました。

 お母さんがいると、だらだらとして甘えて回転がストップしてしまう頭も、頼る相手がいなくなると否応なくやらざるを得ません。やるうちにだんだん調子が出て来て、いつもは、見ただけで「ぼく、出来ないようよ」と言っていたような問題も考え、普段の倍近い取り組みが出来ました。

「えらかったねェ、Iくんってお母さんがいなくても一人で何でもできるんだ。すごいね。」とほめると「ウン、ぼくがんばったから、お母さんの所に行ってくる」と言って、上機嫌でドアの外に待機していたお母さんの所へ飛んでいきました。

 お母さんは頭では、甘やかしてはいけないとわかっているのですが、気付かないうちに甘やかしが進行していました。何とかしなければと思ってもこれまで獲得した権利をフルに使うIくんにふり廻されるばかりで、お母さんの何とかしようという試みはいつも失敗に終わってしまい、なかなか改善できません。教室でのレッスン中もIくんはお母さんがいられると甘えてダラダラするので、お母さんに、「Iくんひとりになっても大丈夫ですから、お家に帰ってください」というと、お母さんはIくんに「ちゃんとしないとお母さん出ていきますよ」と口でおどされるのですが、「ちゃんとする!帰らないで」と泣きつかれ、一度も実行された試しがありません。Iくんはお母さんが口だけということも良く知っているのです。こんなことをいつまでも繰り返しているのはよくないので、Iくんが何を言おうと思い切って出て行くようとお願いし、実行してもらいました。はじめは冒頭のような大騒ぎをしていましたが、そのあとのIくんの様子や成果をきかれて、自分が離れてもIくんがひとりでちゃんとやっていけるということが解られました。

 今まで、お母さんは子どもが離れられないとか、ひとりでは何も出来ないから自分は仕方なしについていると想い込んでおられたのですが、本当はお母さんが子離れをしていなかったのです。子どもの自立はお母さんの自立でもあるようです。

 ちなみに子離れができないお父さんもおられます。